『テイク・ミー・アウト2018』を見た

2003年、ブロードウエイが初演の、メジャーリーグの野球チームのお話の日本語版。
メジャーリーガーを日本人が日本語で演じる。話が進むにつれて白人は白人に見えてくるし、渋谷にいるのに日本人のカワバタ=サンがマイノリティだった。ほぼ全編スペイン語で話すマルティネスとロドリゲスが日本語のセリフを言うと「日本語だ!」って新鮮に感じる。

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ストーリーとか

メジャーリーグのヒーロー・ダレンがゲイをカミングアウトして〜というあらすじを見ただけでは「ゲイで誤解されたりもしたけど雨降って地固まって仲間と一緒にがんばるぞい」かなーと勝手に思ってた。全然そんなぬるい話じゃなかった。
差別されている側が美化されることがない。ゲイコミュニティーで底辺のヒョロいユダヤ人も同じアパートに住むゲイカップルに対して見栄を張ったりする。有色人種も孤児でバカでコミュ障の白人を見下してる。いい奴だと思われてても追い詰められたら保身に走る。全員汚い人間で、表向きバレたら社会的にまずいから黙ってる黒い部分があって、終演後の後味は苦々しい。自らが持ち合わせてる差別意識はなんだろうかと、内に内に意識が向かう。

アメリカの差別問題について知っていたら、結末に納得できるのかなあ……信心深いキリスト教徒でゲイは正しくないと差別を剥き出しにする人物は妻子を残して死ぬ。両親が心中し孤児院育ちという事情があっても有色人種差別とゲイフォビアを隠すことを知らない人物は刑務所行き。そういう犠牲の上でダレンはチームを優勝に導き、ゲイコミュニティで歓迎され、恋人と幸せになって終わるんだー、へー……って冷めた目で見てしまう。

見てる間も見終わってからずっと考えてみても、自分が台詞の意味を、わかってるのかわかってないのかわからなくなる。
ユダヤ人が野球について語る「野球は3と3の倍数でできてる」(スリーアウト、9回)とか、野球選手の子供の人数が3人とかは意味があるのかと思ったけど三位一体なんて単語は一度も出てこない。ダレンが「神に近い」と自称するところも、宗教的なにおいを感じるんだけど直接的な言葉は出てこないし解説もない。アメリカみたいにキリスト教がマジョリティの国だともっと裏の裏の意味まで通じてるのかなー。

栗原類がすごかった

栗原類がもう、一目見て「あそこに栗原類がいる!」って存在感ですごかった。あの良くも悪くも浮いてる感じクセになるわ。
舞台に立ってるのを見た第一印象は「わあ栗原類だー本物だーテレビで見る人だー」とのんきに眺めてたのに、ストーリーが進むにつれてどんどん印象がテレビの栗原類から離れていく。開演前、まあ下手でも超有名人の実物見られるからと舐めてかかって申し訳ない。無言で立ってるだけで絵になるうえにオーラも出してる名優だった。

映画『17歳のカルテ』のリサ役で注目されたアンジェリーナ・ジョリーについて主演のウィノナ・ライダーが「リサ役を演じれば誰だって賞を獲れる」と言ったという噂を聞いたけど、今作で栗原類が演じたシェーンもそういう役だったのかもしれない。そのうえで、やっぱり栗原類が最高のキャスティングだったと思う。暗い過去を淡々と告白して気まずい空気になったのにいきなり笑い出して「だって笑えるだろ!」。前半はほとんどセリフがないのに、この場面だけでこいつヤバイ奴だってチームメイトも全力で距離置く人物像を共有できる。
警察署で勾留中のシェーンの元にチームメイトが面会に来るシーンがすごかった。とにかくすごかった。髪を振り乱して、地団駄踏みながら怒り、自分には野球しかないと叫ぶシェーンとにかくすごかった。「泣ける」とか「感動する」とかそんな優しいものじゃない。心臓が石になったようだった。自分がちゃんと息をしているか不安で確かめてしまう。メデューサに睨まれて死ぬ時ってこういう感じかと思った。

いろいろ

陳内さんの演じるヒスパニック系よかった。舞台で動き出した瞬間からラテンの色男って感じのチャラさでかっこいい。
あとよかったのはやっぱりダレン。これがエリートアスリートの肉体美!演出によくある一人だけ固まって立ち尽くし、周囲の人は流れていく〜みたいなシーンがかっこいい!ギリシャ彫刻の美青年だった。生身の人間にいるんだ……。

休憩なし2時間の舞台はまあ珍しくはないけど、この舞台は2時間ずっと本気の展開でチルアウトの時間がない。座ってるだけなのに脳と心臓が疲れた……終演時になぜかやりきった感がある、座ってるだけなのに。

観劇後タイミングよく大谷選手のシーズンがはじまったのもあって、メジャーリーグの試合が放送されてると見るようになった。メジャーリーグの派手な中継を見ての観劇はまた別の見え方があるといいなー

 

劇場覚書
青山クロスシアター
青山劇場の脇の細い道をまっすぐ進むと左手にある。
立地も間取りも地下にあるところもライブハウスっぽい感じ。広くてきれいなロビーとか軽食とかクロークとか何もない。

中央にステージがあって、おそらく入り口扉より手前、扉の左手側が正面だと思う。それでもどっち側が、どこが外れということはなかったと思う。ステージまんべんなく使われてて演出すごいなあよくできてるなあと思う。

W列ベンチシート席すっごい近い!小道具で使われるお弁当のおいしそうな匂いも、舞台上で噛んでるガムの甘い匂いも嗅げる!手を伸ばせば届く距離で劇が進んでいくのよかった。

午後のロードショーなど

 午後のロードショーやその他無料放送で見た映画の感想。自分が「あの映画なんだっけ」になったときのために、twitter投稿をここにまとめておきます。遊戯王のキャプは『16ブロック』の一場面。このキャラがすごくよかった!

 

午後ロー 

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 『16ブロック』いい映画でしたね

今日の午後ローで見た昔のキアヌ・リーブス可愛かった(『チェーン・リアクション』)

地球が公転軌道から外れちゃって暑くなったり寒くなったり大変!そうだ避難所に行こう!その座標は避難所ではない!そこに8カ国の核を撃ち込んで地球を軌道に押し戻す計画だ!なんだってその座標に娘がいるんだぞ!再会したけどあと5分で核爆発だ!米軍ヘリで脱出成功!USA!USA!(『アースフォール』)

ジョン・ウー監督『ハード・ターゲット』最後の「おっと」で文字どおりの意味でも全部吹き飛ぶおもしろさだった。途中森の中でヘビパニック映画になるところもマリオみたいなおじきも良い……

ジョン・ウー監督『ブロークン・アロー』言葉を失うほどのすごい馬鹿しかいない映画で最高!!ヘリコプターが4機炎上爆発する!鉱山で核爆発もする!列車も爆発!手榴弾何個持ってるんだ!鳩は飛ばない!トラボルタいいよね!ストーリーは何もないけど爆発を満喫できるおもしろ映画大好き

 

トゥームレイダー (初回限定版) [DVD] ホーム・アローン3 [DVD] 15ミニッツ [Blu-ray] 特攻野郎Aチーム THE MOVIE(無敵バージョン) [Blu-ray] トロイ ディレクターズカット(初回生産限定スペシャル・パッケージ) [Blu-ray]

トゥームレイダー』初めて見たんだけど、巨大仏像が立ち上がって殴りかかってくるとか、お寺でお茶を飲んだら一瞬で傷が治るとか、時を止めて動きだしたらナイフが逆方向に飛んでるとか面白かった。そのへんの神仏物理学なんでもまあまあ信じる日本人にはなかなか斬新な発想が次々くる… 

ホームアローン3』面白かった。ホームアローンの泥棒は頭上にバーベルが落ちてきても農業機具に巻き込まれても3階の高さから落ちてもすり傷にしかならないから笑って見てられていいよねー。3の主人公のほうがマコーレカルキンより可愛い顔してるし出掛けるママに投げキス可愛すぎて死/『ホームアローン3』は途中でながれる軽快な音楽もとてもよかった

『15ミニッツ』面白かった。セックスとバイオレンスしかない!チェコ人の殺人犯のいかれた感じ、昔の窪塚洋介がやってそうなキャラクターでとても好き。殺人犯相棒のロシア人もいいキャラで、それに比べて正義の味方は私刑やっていく暴力人間のアンバランスがすっきりしないかもしれない

特攻野郎Aチーム THE MOVIE』アクションが次々繰り出されてテンポよくていい。3D戦車とかショータイムのコンテナとか。お昼にテレビで見るより映画館の大画面で爆音応援上映したい

『トロイ』ブラピの肉体美や何かを堪能する映画ブラピかっこいい。ストーリー的には次男が何から何までクズだし次男をかばっちゃう身内もなぁ……

 

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フェア・ゲーム』どーしよーもないくだらない内容なのにシンディ・クロフォードで予算たっぷりで言葉にならない。宅配ピザをクレカ払いで注文したせいで敵方スーパーハッカーに使用履歴から隠れ家特定されたのに「警察署内に裏切り者がいるんだ!」っていう刑事が主役でKGBをやっつけるよ!

ラン・オールナイト』すごくよかった。年とって引退状態の殺し屋のジジイが、カタギの息子を守るために30年来の仲間だったマフィアのジジイを殺す……最後の会話とか、ジジイがジジイの腕の中で看取られるとか渋い……老殺し屋vs現役凄腕殺し屋もアツいし、父子の距離感も最高だった

先週やってた『アンノウン』は初見でも面白いんだけど、2回見ないとダメっぽい。あの胸糞悪い前半を、オチの分かった今すごく見たい!絶対伏線があちこちにあるはず。かっこいいと思ったスパイの爺さんも年とって時代についていけない人だしさー。/映像とかインテリアが好みの感じでよかった

午後ローじゃない

ジャッキー・チェンの『ツイン・ドラゴン』最初から最後まで安定して面白いコメディでよかった。小さなお子様のいるご家庭にもおすすめ

たけしの『HANA-BI』よかった。アウトレイジのバカヤローコノヤローのイメージしかなかったのに、夫婦の楽しい暮らしの一コマみたいなのを撮るのがこんなに上手いなんて。どのシーンも画面がきれいで、かつ家の固定電話の前の住所録とか、あの頃の日本の庶民の生活がそのまま映されてて圧倒的にアート