『鴎外の怪談』を見た

エスケイプさん目当て東京芸術劇場初日行ってきた。

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水崎さんがすっごいかわいい

エスケイプさんは鴎外の後妻のしげ役なんだけど、いやあ、もうすっごい美人でかわいかった。そのへん歩いてる美人って、正面はかわいくても横顔がちょっと残念とか、笑顔がちょっととかあると思うんだけど(自分の顔は棚に上げつつ)水崎綾女はすごい。360度どこから見てもかわいい。笑顔も怒った顔もかわいい。この舞台ではずっと和装で髪を結ってるんだけど、横顔のおでこのラインがとてもかわいい。それにくわえて声も最高だった。ときどき「あっエスケイプの声だ」ってなりつつ。芸能人の美人ってすごいなあ。あー……かわいかったなあ……。

お着物は5種類くらい着たのかなあ。原稿を書く時の普段着、菊見に行くときのよそ行き、クリスマスの買い物から帰ってきたときの成人式でよく見る白いふわふわ巻いてるの、寒い夜にどてら着込んでるの、ルイが産まれてのお披露目会。
たしかクリスマスの場面だったか、水色の着物がすてきだった。

肝心の内容について

舞台は鴎外宅(観潮楼)2階の洋間、ときは明治43年。幸徳秋水以下26名が逮捕されようとしていた……という感じで、森鴎外を中心として大逆事件を描いたというか、大逆事件に翻弄される鴎外を描いたというか、とりあえず怪談ではなかった。幽霊出てこない。「エリス」とはあの女ではなく俺の心の弱さのことなのだー、みたいなところが怪談要素かもしれない?

鴎外はなんと言うか、色々な期待を背負ってる。
平出修「大逆事件の弁護することになったけど社会主義の本とか読んだことないから社会主義思想について教えて。あ、本貸してくれるの?それ発禁で困ってたんですよねー、そうだスバルの原稿もお願いしますね」
永井荷風「やっぱり留学しないと日本の良さってわかんないよねーつか早稲田の奴ら自然主義わかってなくね?ゾラの思想理解できてないくね?武者小路死ね!」
賀古鶴所「おまえが陸軍で出世したいって言うから俺ちょう頑張ったよね。俺の言うこと聞いてよね。親友じゃん。だから秘密会議に行くよね?山県有朋に歯向かわないでね?」
母「森家の人間として恥ずかしい真似はよしなさい」
しげ「昔みたいに手をつないで散歩したいー菊見一緒に行ってくれなきゃやだー舞姫の太田豊太郎かっこいい」
大雑把に書いたけど、政府側(賀古、母)と反政府側(平出、永井、しげ)の板挟みになってる。鴎外自身は本当は言論弾圧も、社会主義者の不当逮捕も死刑も反対なんだけど、いざ賀古に問いつめられると「いや、別にそういう意味じゃないけど……」ってなる。その鴎外が社会主義者の死刑判決が正式に決まった晩に「エリスと別れさせられた日のようにはさせない!今こそ自分の意思を通すぞ!」って立ち上がったけど、結局また賀古と母に負けた。そして日常は続く……。

コメディだった

鴎外はあちらを立てればこちらが立たずのつらい立場なんだろうけど、かけあいが面白くてコメディになってる。「あの世で泣いてるなんて価値観がいかんのだ」「そうだそうだ」て会話のあとに入ってきた女中が「きっとあの世で泣いてらっしゃいます……」って言い出しちゃって「あっ…そう、そうね」みたいなパターンが何度もあって、思想弾圧なんて重いテーマについて話してるはずなのに軽いノリで進んでいく。
「西洋文化は人々に受け入れられたが、思想はまだまだ時間が必要なのだ。すみだ川は急にセーヌ河にはならないのだ」とか「主義者が死刑になるのではない、思想の自由が死ぬのだ」とか、明治時代についての本で読んだようなフレーズがやたら出てくる。「すみだ川がセーヌ河にならない」は使いやすいのでテムズとかガンジスに置き換えて使っていきたい。
舞台装置は客席から見て右手に円窓があるのに全然使われないなあと思ってたら、あとのほうでちゃんと使われてた。障子に影が映ったかと思えば、いきなりガラっと開いて「ここにきてついに怪談がはじまったかー?」と思ったら髪を乱したしげが窓から入ってきた。あと後半のしげは薙刀を振り回すところがとてもよかった。

よかった

なんかもう言うことなしなんだけど。とにかくよかった。面白かった。
あーそういえば「永井荷風大逆事件のショックで戯作者になる」っていくら解説本で読んでも理解できなかったんだけど、今回の舞台で一連の流れがわかって納得した。ついでに荷風が新橋芸者大好きクズでよかった。
舞台関係ないけど、パンフレット(600円)に載ってる関連年表と鴎外宅の間取り図が関連文献読むときに便利そうで買ってよかったと思いました。

舞姫 すみだ川・新橋夜話 他一篇 (岩波文庫) 【Amazon.co.jp限定】「赤×ピンク」水崎綾女写真集 生写真付き (写真集・画集)

劇場覚え書き
劇場のロビーは広くてきれいで、バーみたいなスペースがある。ビールと軽食も売ってる。トイレも広くてきれい。池袋駅と地下道直結で、劇場のあるビルの近くにカフェもあって便利っぽい。地上から行こうとしたら迷った。
シアターウェストは狭かった。双眼鏡ほとんど使わない。狭いながらも前の人の頭が邪魔にはならないし、良い劇場だった。

J列。出入り口が近い。次に行くことがあったらまたJ列でもいい。